現役を退いてはいるものの、電子回路技術者の端くれです。
ちょこっとした電子回路モノであれば、自分で回路を作って蛇の目基板で組み立てるなんて事を希にやります。
ちょっと思う所があって、久しぶりにシミュレーションでもやって見ようかと思い立ったので適当なシミュレーションソフトを見繕う事にしました。
って言っても、この手のソフトはまともなモノを買おうとすると数十万~数百万します。それに、使いこなす為のハードルも結構高い事は、十数年前に色々とかじったので分かっております。
会社の標準はアジレントのADSなので、こいつを使う事も出来るのですが現役を引退してるので既に使い方を覚えているかが怪しいですし、何より家で使えません。
流石に仕事中に会社のソフトで趣味の事をするわけには行きません。
昔購入したCQ出版の体験版のソフトを引っ張り出そうかと思いましたが、何処に行ったか・・・。何より、Win3.1/95時代のソフトですしね。
そこでふと思い出したのがリニアテクノロジー社が無償で配布しているLT Spiceです。
これの存在は知ってはおりましたが、今まで使った事が無かったので早速リニアテクノロジー社のホームページに行ってダウンロード。
マニュアル類が英語ってのがハードルになりますが、変な制限を設けて無いですし標準的なSpiceから外れていない様なので好感が持てます。
モデルライブラリーも当然、リニアテクノロジーのモノばかりですが、通常のSpiceと同じ様な手順で、他社のSpiceモデルも使えます。
どうせ考えた回路の動作傾向を確認する程度ですから厳密なモデルが無くてもいいや。
少し、話がそれますが回路設計の初心者がシミュレーションソフトを使い始める時に期待するのはシミュレーションした結果と実際に組んだ回路がぴったり一致する事では無いかと思います。
その為に、部品モデルも厳密に自分の使うモノと一致させたいとか、作る回路を全部通しでシミュレーションしたいとか、高度な要求をシミュレーションソフトに求めます。
勿論、高価なシミュレーションソフトを十分に使いこなす事で相当実際の回路と一致する結果を得る事が出来ます。(パターンの浮遊容量なんてのも含めてシミュレート出来ます。)
でも、そんな事を期待しようとすると高価なソフトと常にモデルライブラリのメンテナンス、使いこなしの為の情報収集などで追い回される事になります。
仕事でしたら、メンテナンスやアドバイスの専門スタッフを常駐させる事も考えますが、個人では到底出来ません。
ですから趣味で電子回路を作るのであれば、あくまでシミュレーションソフトは自分が考えた回路に思い違いが無いかを確認する程度の道具と考えると簡単なモノでも有用です。(モデルも大体近いモノがあればOK)
そんな目でLT Spiceを見ると、無償でこのレベルのモノが手に入るのは有り難いもんです。回路図エディターの使い勝手も簡単で分かり易いと思います。
大昔にPspiceやマイクロキャップのCQ版なんてのを購入したのは何なんだったろうって思ってしまいました。
使って見て、少し困ったのは回路図に日本語のテキストが入れられない(文字化けする。)事と、(実は)リニアテクノロジー社の部品に馴染みが無いので、オペアンプなんかも部品名から特性を想定出来ません。仕方が無いので、オペアンプについては、JRCのホームページからSpiceパラメーターをダウンロードして使う事にしました。
尚、JRCからSpiceパラメーターをダウンロードするにはユーザー登録をする必要があります。登録の際の記入内容は個人を対象としていない様ですが、まぁ、別に回路設計とは全然別の職種であっても登録には問題無いと思います。どうせ、自動で登録通知がメールで来ますので・・・。(この登録メールのパスワードが無いとSpiceモデルのダウンロードが出来ません。)
それと、LT Spiceでは2個入りのモデルのシンボル(形状図)が無い様です。その為に、JRCのモデルを使用する時にはモデルの最初のピン接続の宣言部分をREMアウトする必要があります。(libファイルをテキストエディタで編集する。)
LT Spiceではシンボルを作る事も出来るので試しに2個入りオペアンプのシンボルを作って見ました。割と簡単に出来て使える様です。
まぁ、こんな感じでLT Spiceを導入して見ましたが、その後は・・・・LT Spiceをちょこっと触った程度で既に放置状態です。マニュアルもロクに読んでないし。
そもそも、シミュレーションしてまで作ろうと思っていたモノを作る意欲が既に激減です。ダメですね・・こりゃ。(でも、これ会社のPCに入れとこう。若い衆に回路についてウダウダ言う時に役立つカモ。ADSみたいに重たいのを今さら入れる気にならないしぃ~)
(貼り付けた画像は自分で作った2個入りオペアンプのシンボルとJRCのライブラリを使用して試した時の回路図です。)
最近のコメント